エジプトの南にスーダンという国があります。エジプトとの国境線が真っ直ぐな国ですね。もっとも、アフリカや西アジアでは、真っ直ぐな国境線はそれほど珍しくありませんが。
さて、この国、なんとなく名前は聞いたことがあるという程度の人が多いでしょう。でも、それ以上は知らないという人が大半なのでは無いでしょうか。私もその一人ですけど。
そこで、ちょっとスーダンについて調べてみることにしました。エジプトの隣国ですから、最低限のことは知っておいてもいいでしょう。
Contents
国名の表記
アラビア語での表記は、السودان جمهوريةです。発音は(jumhuriat alsuwdan)らしいです。جمهورية は、共和国という意味ですね。
英語での表記は、”Republic of the Sudan” です。ということで、日本語の名称としてもスーダン共和国という方が正確でしょう。
ちなみに、共和国というのは、君主国の対義語です。調べてみたところ、定義がかなり曖昧なようですが、広く取ると君主がいない国という意味で良さそうです。
ただ、「共和国」という言葉のイメージとは異なり、2010年までは軍事独裁政権でした。まあ、北朝鮮も共和国ですから、「共和国=民主的」と解釈するのが、短絡的すぎるのかもしれません。
漢字では「蘇丹」とも書くそうです。中国語も、この漢字をあてるようですね。
首都
首都は、ハルツームです。
ハルツームの人口は「2000年時点で約2,730,000人(ウィキペディア)」ということです。また、「2010年の都市的地域の人口は518万人(ウィキペディア)」なのだそうです。
これは、「世界第58位、アフリカでは第5位(ウィキペディア)」なのだとか。結構大きな都市なのですね。
このハルツームは、ムハンマド・アリー朝のころに、エジプトによる支配の拠点として築かれたのだそうです。そう考えると、まだ200年程の歴史しか無いことになります。
国民
2011年の段階で、3400万人程度らしいです。まあ、多くもなく、少なくもなくっていうところでしょうか。
宗教は、イスラム教徒が多いようですね。スンナ派を中心に、70%がムスリムなのだとか。
その他に、伝統宗教(アミニズムなど)が18%、キリスト教が5%います。
実は、もともとスーダンでは、キリスト教徒の割合がもっと大きかったようです。しかし、南が分離独立したために、イスラム教徒の割合が増えたという事情があるようです。
ちなみに、キリスト教徒の割合が減った結果、キリスト教徒への迫害が強まっているようですね。まあ、宗教の問題では、少数派になると大変なこともありますね。
公用語はアラビア語ですが、英語もある程度は通じるようです。
在日スーダン人
ちなみに、日本にいるスーダン人もいるようです。外務省のサイトによると、 2017年12月現在、 230人のスーダン人が日本にいるのだとか。
一方、スーダンにいる日本人は、2017年10月現在、134人だそうです。どちらも、非常に少ないですね。
在スーダン日本大使館もあるので、大使館関係者も何人か含まれているはずです。ということは、ほとんど日本人はいないという認識で良さそうですね。
逆に、スーダンにいる日本人は、何をやっている人なのでしょうか。商社関係とか??
軍事独裁政権がずっと続いてる?
外務省の「スーダン共和国(The Republic of the Sudan)基礎データ」というページを見ていたら、かなり驚きました。
何に驚いたかを見るために、具体的にいくつかのイベントを抜いてみましょう。キーワードは「クーデター」と「バシール」です。
1956年1月:スーダン共和国独立
1958年11月:軍事クーデタによりイブラヒム・アッブードゥ軍事政権成立
1969年5月:軍事クーデタによりガファール・ニメイリ軍事政権成立,「スーダン民主共和国」に改称
1989年6月:軍事クーデタによりオマル・バシール軍事政権成立
1993年10月:バシール中将が大統領に就任
1996年3月:総選挙実施,バシール大統領再任
2000年12月:大統領選挙実施,バシール大統領再選
2005年1月:南北包括和平合意(CPA)成立,バシール大統領が南北統一政府大統領に就任
2009年3月:国際刑事裁判所(ICC)がバシール大統領に対する逮捕状を発布
2010年4月:総選挙実施,バシール大統領再選,キール南部政府大統領当選
2015年4月:総選挙実施,バシール大統領再選
これを見るとわかるように、第二次世界大戦後にスーダン共和国という国ができました。そして、立て続けに、軍事クーデターが起こっています。
そして3回めの軍事クーデターのあとは、30年にわたってオマル・バシールの政権が続いているわけです。なんだから、すごい国ですね。
ちなみに、このオマル・バシールの時代に、南スーダンが分離独立しています。もう、めちゃくちゃですね。
経済
スーダンのGDP は、1,175億ドルです。一人あたりにすると、GNI は2,378ドル(2017年,世銀)です。ちなみに、一般的には、「GNI ≒ GDP」だと思って大丈夫でしょう。
そうすると、日本円にして、一人あたり20万円から30万円というところでしょうか。まあ、貧しい国に入るのでしょう。
ちなみに、隣国のエジプトの一人あたりGDP は2,475米ドル(2017世銀)です。大体似たような水準のようです。
ということは、アフリカの中でみると、それほど貧しいというわけでも無さそうですね。
ところが、IMF の推計によると、スーダンの一人あたりGDP は1,123.49ドルまで下がります。なんだかよくわからないですね。
通過はスーダン・ポンド(SDG)。為替レートは1ポンド2.33円(2019年4月2日時点)だそうです。米ドルにすると、0.021ドル。
![Hayko [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons スーダンポンド](http://www.egypt-shirabetemita.com/wp-content/uploads/2019/04/2019-04-02-1858-SUDAN.png)
経済成長率は、4.3%(2017年,世銀推定)です。これは、途上国としてはちょっと物足りない数字でしょうか。まあ、日本よりは遥かに大きな成長率ですけどね。
失業率は、13.3%(2017年,世銀推定)と、結構大きめの数字でした。もっとも、失業率は国によって基準がバラバラなので、この数字だけから失業問題の深刻さはわかりませんけどね。
それよりも深刻なのが、物価上昇率です。なんと、52.37%(2018年1月,スーダン中央統計局)もあるのです。
途上国は先進国に比べて、インフレ傾向にはなりやすいんですけどね。でも、年50%を超えるインフレは、かなり大きな問題ですね。
これだと、庶民の暮らしは大変でしょう。100円で買えていた飲み物が、次の年には150円になるという話ですからね。
スーダンの観光
さて、観光旅行先としては、スーダンはどうなのでしょうか。あまり情報が無いですが、ウィキペディアにちょっと載っていました。
Sudan is one of the largest Arab nations. It is rich in history dating back to the Ancient Egyptians and the Ancient Nubians. There are many pyramids all over Sudan, attracting many tourists from Syria, Egypt, Morocco, Jordan and other Arab countries, as well as tourists from Western nations. Sudan was voted the 8th most popular Arab nation to visit by the Council of Arab Economic Unity. Sudan also has many modern hotels including the five star Corinthia Hotel Khartoum in Khartoum. The government of Sudan also pledge $1 billion a year to increase the tourist industry.
ポイントをかいつまんで日本語にすると、次のような感じでしょうか。
- スーダンはアラブ最大の国の一つ
- 古代エジプトや古代ヌビアにまでさかのぼる歴史がある
- スーダン国内には、全域に渡って、たくさんのピラミッドがある
- 西洋諸国だけでなく、シリア、エジプト、モロッコ、ヨルダンといったアラブ諸国からの旅行者がいる
- 5つ星ホテルである、Corinthia Hotel Khartoum などがある
なんか、情報がペラッペラですね。具体的な数字が、全然出てきません。
ちなみに、日本から行く場合には、当然ですが直行便はありません。金額的には、時期にもよるでしょうが、10万円台の中盤くらいは覚悟しておく必要がありそうです。
旅行会社が主催するツアーだと、20万円台の中盤くらいなのかなあ。まあ、航空券の価格から考えると、そんなもんでしょう。
率直に言って、これだけ高いとなると、よほど興味がある人しか行かないでしょうね。もっと安い値段で行ける上に、観光地としても有名なエジプトが、すぐ近くにありますから。
意外と(?)治安は良い
スーダンというと、なんとなく危険なイメージがありました。南スーダンのニュースをよく耳にするからでしょうか。
しかし、外務省の海外安全ホームページを見ると、それほど危ない場所では無さそうです。見た限りでは7割位の地域が危険レベル1で、残りの3割が危険レベル2という感じでした。
決して安全だとは言いませんが、すごくまずい状況ということも無さそうです。まあ、極力控えたほうがいいのかもしれませんけどね。
参考までに、隣国のエジプトの危険レベルも調べてみました。こちらも、1から2です。
つまり、スーダンの治安は、エジプトなみ程度だと思っておけば良さそうです。その意味でも、旅行をしようと思えば可能というくらいかな。
ちなみに、外務省のサイトには、次のような説明がありました。
国内では,西部のダルフール地方で2003年頃から,南部2州(南コルドファン州・青ナイル州)では2011年から紛争が続いてきたが,現在は,政府側とほとんどの反政府勢力がそれぞれ一方的敵対行為停止を継続中であり,現地の治安は改善傾向。これを踏まえ,現地の国連・AU合同ミッション(UNAMID)が活動を縮小しつつある。
なるほど。たしかに治安は改善しているようです。
テロ支援国家
ただ、アメリカからテロ支援国家に指定されているという側面もあるようです。
1993年にはアメリカ合衆国にテロ支援国家の指定を受け、以後経済制裁が続いている。
ウィキペディア
そして、対米関係が悪いことに目をつけて、中国が触手を伸ばしているようですね。
バシール政権はヌメイリ政権時代から友好的でスーダンの豊富な資源を求めている中華人民共和国との関係を深めて中国企業はスーダンの産油企業2つの最大株主となっており、国際連合アフリカ連合ダルフール派遣団で中国からの国連平和維持部隊も受け入れ、中国の援助で自らの大統領府も建設するなど経済・軍事両面で両国は密接な関係を持っている。
ウィキペディア
このあたりは、抜目がないですね。ちょっと感心してしまいます。
スーダンに限らず、アメリカが制裁するような国ですから、西側諸国はあまり手を出していません。ということは、大体がヤバそうな奴らなんでしょうけどね。
スーダンは産油国ですから、その意味でも関心があるのでしょう。石油と言えば、中国は、一時期リビアにも手を出していましたし。
でも、中国経済もかなり失速して、以前ほど石油は必要としていないはずです。さて、今後、どうするのでしょうか。
邦人の犯罪被害も
邦人の犯罪被害もあるようです。在スーダン日本大使館のサイトに、次のような記述がありました。
<2018年における邦人被害に係る一般犯罪例>
○ 窃盗(すり)事件(2月5日(月))
午後8時頃、在留邦人男性が、ハルツーム国際空港南側のジレイフ・ターン交差 点からリヤド方面へ向かうバスに乗車する際、大勢の客と揉み合いになりながら乗 車して座席に座り、降車時に運賃を支払おうとしたところ、ポケットに入れておい た現金及びIDカード在中の財布がなくなっていることに気付いたもの。
○ セクシャルハラスメント
在留邦人女性が、ティルハル(注:個人でタクシーを手配するアプリ)のタクシ ー運転手から、後部座席に座っていたにもかかわらず、道案内を求め助手席に座る よう言われ、卑猥な言葉をかけられたり体を触られたという事例も報告されている。
○ 窃盗(部品狙い)事件(11月16日(金))
午前10時30分頃から同11時30分頃までの間、在留邦人がハルツーム2に 所在するスポーツ施設付近の路上にRVを駐車中、左右のサイドミラーを窃取され たもの。
○ 窃盗(車上ねらい)事件(11月20日(火・祝日))
午後3時頃から同5時頃までの間、ハルツーム2に所在するレストラン「オゾン」 南側の路上に駐車中、車内を物色され、50スーダンポンドを窃取されたもの。
安全の手引き
在留者は上に書いたように134人しかいません。観光旅行客を含めても、スーダンにいる日本人は多くないでしょう。
そう考えると、これだけの犯罪にあうというのは、かなり確率が高いと考えて良さそうですね。特に、今回挙げられていた事件の被害者は、在留邦人が中心のようですし。
134人しかいなくて、年間数件の被害って、そとうですよね。
まあ、最後の車上荒らしの被害の50スーダンポンドは、日本円に直すとわずか100円ちょっとですけどね。それより、物色をされた気持ちの悪さのほうが大きいでしょうか。
南スーダンはヤバい
隣国の南スーダンはどうかというと、全域に渡ってレベル4でした。レベル4というのは、「退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」ということです。
要するに、行くなって話ですね。もし行っている人は、何とか逃げ出せと。
まあ、ジャーナリストでも無ければ、わざわざ行こうとは思わないでしょうけどね。
とりあえずツアーが楽かなあ
始めてエジプトに行くなら、とりあえずツアーが楽でしょうか。H.I.Sのツアーをチェックする限り、5日間で10万円ちょっとからという感じですかね。もちろん時期にもよるのでしょうけど。
あ、ちなみに、添乗員が同行するプランです。
興味がある人は、チェックだけでもいかがでしょうか。

スポンサードリンク
スポンサードリンク